はじめに
2018年・2019年と、ケアマネジャーの受験者数は2年連続で過去最低を更新しました。
これには、受験資格の厳格化が大きく関係しています。
筆者が受験したのは4年前でした。
当時は、介護の実務経験が5年以上あれば、介護福祉士所有者はケアマネを受験出来ました。
介護の仕事を始めて5年目の人も、ケアマネ受験出来た訳です。
しかし、今は介護福祉士を取得してから更に5年の実務経験が求められます。
ですから、今は最短でも8年間介護の実務経験がなければケアマネを受験できないことになります。
しかし、ケアマネ受験者数が減少している理由はそれだけではない様です。
ケアマネ業務が敬遠されている理由は、以下の3つです。
- 「要」である責任と報酬のバランスが悪すぎる
- 業務範囲が広すぎる
- 介護職との給与差が縮まった
それでは、詳しく見て行きたいと思います。
ケアマネ業務が敬遠される理由
『要』であることの責任と報酬のバランスが悪すぎる
ケアマネジャーは、介護保険制度の『要』です。
それは、ケアマネジャーにとって『誇り』となるべき点です。
『要』であるがゆえに、そのプレッシャーや責任も大きいと言えます。
どの職業においても、プレッシャーや責任に応じた見返りがあれば人は耐えられると筆者は思っています。
見返りとは、報酬つまり給与です。
責任やプレッシャーに耐え、喜びに替えることが出来る人は素晴らしいです。
しかし、仕事に対する報酬や社会的地位が得られなくては、プライドを持続させることは不可能です。
業務範囲が広すぎる
本来のケアマネジャーの業務は、介護サービスの調整です。
しかし、現実は介護保険外の業務が重くのしかかっている状況です。
言い換えると、
ケアマネジャーが介護保険制度のスキマ全てを埋めている
ことになります。
状況によっては病院への付き添い等も求められる時もあります。
- 入院時など、家族代わりを求められる
- 生活全般の関わり(電気代など管理)
- 時には、家の掃除や整理も
独居やご家族さんが遠方に居られる場合などは、ケアマネジャーが家族代わりを求められることもあります。
また、電気代や水道代の支払いが滞っていれば、調整しなければならない場合もあります。お金はあっても、振込み忘れたりするケースが多いようです。
訪問ヘルパーを活用して、清掃なども行いますが、ケアマネジャー自ら家の中の整理を行うこともあります。
以上のことは、実際にケアマネジャーから体験談として聞いたことです。
ちなみに、筆者はケアマネジャー資格は保有するものの実務は行ったことはありません。
「これは大変だった」というエピソードは、まだまだ沢山あると思います。
介護職との給与差が縮まった
ここ数年、介護職員の処遇改善が進んでいます。
私もデイサービスに勤務する介護職です。
「介護職員処遇改善加算」などにより、給与が徐々に上昇している実感があります。
一方、現在ケアマネジャーへの処遇改善は行われていません。
よって、介護職員との給与の差が縮まっています。
「ケアマネジャーは、介護職に比べて給与が高い」と言えなくなってきています。
今後の対応策
現在、ケアマネジャーの業務は多岐に渡っています。
しかし、処遇改善手当が無く、介護職員との給与の差も小さくなっている。
この状況が続けば、ケアマネジャーに憧れる人が少なくなるのは避けられないでしょう。
再びケアマネジャーが介護界の誇りとなるためには、
- ケアマネ業務の軽減
- 処遇改善手当を支給する
この2点が必要です。
あまりにも広いケアマネ業務。
「ここからここまでがケアマネジャーの業務」と役割を明確化するべきです。
また、AIによるケアプラン作成も試みられています。ケアマネ業務軽減に一役買ってくれそうです。
そして、処遇改善手当を支給すること。
仕事はお金ではありませんが、とても大切なものです。
お金は、心を満たす事も出来ます。
どんな責任の大きな仕事も、報酬が見合っていれば報われます。
2021年度の介護報酬改定に期待がかかります。
最後に・・・
筆者が介護界に入った時、今よりも介護職の給与は低かったです。
「どうせやるなら、最高位のケアマネジャーを目指そう!」
そう思って、勉強を一生懸命頑張りました。
そして、ケアマネジャーに試験に合格。
しかし、現在ケアマネジャーの置かれるポジションは当時と異なります。
いや、もしかしたらケアマネジャーは同じ。介護職の処遇が改善されただけなのかもしれません。
「独居や身寄りのない高齢者」が増加している社会構造が、いっそうケアマネジャーの業務を多忙にさせています。
病院の付き添いや生活全般のフォロー。
ケアマネジャーの業務を、何とか介護分野に特化した役割分担に出来ないものか。
一方ではAIによる事務軽減の試みや、ケアマネジャーに対する処遇改善手当が前向きに検討されていると聞きます。
ふたたびケアマネジャーが介護界の憧れになるような制度を創っていただきたいと強く思います。
優秀な人材がケアマネジャーに憧れる仕組みを創ることこそ、介護保険制度を存続させていく唯一の方法だと思います。
「介護職みんなが憧れるケアマネジャー」は、皆の励みになります。
そういう存在は、絶対に必要です。
筆者は30代半ばで介護に転職し、何とか一旗揚げようと頑張りました。
ケアマネジャーには、皆の憧れでいて欲しい。
心からそう願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。