遠距離介護で頼れる支援先は?申請からサービス利用までのガイド

介護について

親御さんに介護が必要になったとき、何から手をつければ良いのか悩む方は多いでしょう。

仕事や家庭の事情で頻繁に帰省が難しい方にとって、必要な相談先や支援策を見つけることは重要です。

今回は、遠距離介護における具体的な相談先から介護認定の申請、サービス利用まで、順を追って解説します。離れていても安心して親御さんを支援する方法を見つけましょう。

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1. 遠距離介護の悩みと課題

離れて暮らす親御さんの様子が気になっても、すぐに確認できないもどかしさを感じる方は多いでしょう。例えば、電話で話した際に少しでも声の調子が違うと「何かあったのか」と気になりつつも、詳しい状況が分からず心配になることもあります。

また、仕事や家庭の事情から、頻繁に帰省するのが難しく、親御さんに変化があってもすぐに対応できないことも「遠距離介護の悩み」のひとつです。親御さんのことを気に掛けつつ、仕事や家庭との両立に苦労し、心の負担を感じている方も少なくありません。

介護が必要だと感じても「どこに相談すればいいのか」が分からず、最初の一歩を踏み出しづらいケースもあります。対応が遅れると、病状が進行して健康状態がさらに悪化してしまうなど、深刻な事態につながる恐れもあります。

さらに、親御さんが介護サービスを拒否する場合もあります。「他人に頼りたくない」「子どもに迷惑をかけたくない」という思いが強く、サービスの利用についても慎重な姿勢を見せる方が多いため、家族としての支援方法に悩むこともあるでしょう。

こうした悩みに対しては、遠距離でも活用しやすい支援体制や相談先を見つけることが、心の負担を軽減するための一歩となります。

2. まずは相談から!どこに相談すれば良いのか

介護のことで困ったときには、「地域包括支援センター」と「市区町村の役所」の2つの相談先があります。どちらも親御さんの状況に合った支援や手続きについて適切なアドバイスを提供してくれる場所です。

どちらでも同じ手続きは可能ですが、具体的な介護サービスの相談や支援プランの提案が必要な場合は、豊富な現場経験を持つ地域包括支援センターへの相談をおすすめします。

①地域包括支援センターに相談する

親御さんの介護が必要になりそうなとき、頼りになるのが「地域包括支援センター」です。各市町村に設置されており、介護をはじめとする高齢者の健康や生活に関する幅広い相談が無料で受けられます。初めての相談でも、介護に精通したスタッフが対応してくれるため、安心して相談することが可能です。

地域包括支援センターには、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門家が配置されており、親御さんの状況に合わせた支援策を提案してくれます。必要であれば、介護保険の申請手続きを代行してもらうことも可能です。また、「どのような介護サービスが受けられるか」などの情報も提供してくれます。

地域包括支援センターに相談するメリットは、地域事情に詳しいことです。介護サービス事業所の評判や雰囲気など、地域の情報も教えてもらえるため、親御さまの性格や生活スタイルに合わせた支援を考える上で、家族としても判断しやすくなります。

また、介護に関する相談だけでなく、日常生活の課題や成年後見制度の利用についてもアドバイスが得られる点も大きなメリットです。

介護申請後には、ケアマネジャーの紹介もしてもらえるため、今後の介護方針について具体的に話し合いたいときにも役立ちます。地域包括支援センターを利用することで、遠距離であっても地域の事情や雰囲気を把握しやすくなり、支援を進められます。

②市区町村の役所での相談

「市区町村の役所」でも相談できます。介護認定を受ける必要がある場合、その場で申請手続きができるため、必要な書類や手続きの流れについても詳しい説明が受けられます。

また、介護保険料の減免制度や経済的な支援制度についても、申請できることもメリットです。電話で問い合わせてみることもできます。

3. 介護認定の流れについて

ここでは、介護認定の流れについて紹介いたします。

①介護認定の流れ

介護認定の流れは、以下の6つのステップで構成されています。

ステップ1. 要介護認定の申請

本人または家族が、市区町村の窓口で申請を行います。(地域包括支援センターや居宅介護支援事業所でも代行申請してくれます)

  ◯必要書類

    申請書

    介護保険の被保険者証

    健康保険の保険証(65歳以下の場合)

    マイナンバーカードもしくはマイナンバー通知カード

ステップ2. 主治医意見書の作成

市区町村からの依頼により、主治医が親御さんの状態に関する意見書を作成します。主治医がいない場合は、市区町村指定の医師による診察を受ける必要があります。

ステップ3. 訪問調査(認定調査)

市区町村の職員や委託を受けたケアマネジャーが親御さんの自宅を訪問し、心身の状態についての詳細な調査を行います。この調査では、日常生活での支援の必要性が評価されます。

※詳細は、次章で説明します。

ステップ4. 一次判定

   訪問調査の結果が専用システムに入力され、コンピュータによる一次判定が行われます。これは主に基礎的な評価となります。

ステップ5. 二次判定(介護認定審査会)

   一次判定の結果に加え、訪問調査の内容や主治医意見書をもとに、介護認定審査会が最終的な審査・判定を行います。

ステップ6. 結果通知

   審査会の結果に基づいて親御さんの要介護度が認定され、市区町村から申請者に通知が送られます。

※所要期間: 通常、申請から結果通知まで約30日程度かかりますが、地域によっては、さらに日数を要する場合もあります。

②認定調査と結果の確認

ここでは、上記ステップ3「認定調査」について詳しく解説いたします。

この調査では、ケアマネジャーや調査員が自宅を訪問し、日常生活の様子や身体機能の状態を確認します。生活における基本的な動作から身体の状態まで、74項目にわたる調査が行われ、調査は約1時間ほどみておくとよいでしょう。

主な調査項目には以下のような内容が含まれます。

  • 麻痺や関節の動き
  • 寝返り・起き上がり・歩行
  • 入浴・排泄・食事などの日常動作
  • 衣服の着脱
  • 金銭管理
  • 視力や聴力
  • 物忘れや徘徊などの行動
  • 最近の受診歴や医療状況(直近14日以内の医療)

調査では、本人やご家族から聞き取りを行います。必要に応じて、手足が規定の高さまで上げられるかなど、実際の動作を見ながら状態を確認します。

遠距離介護の場合、家族が立ち会えないケースもありますが、あらかじめ親御さんの日常生活や最近の健康状態などをまとめておくと、正確な状況が調査員に伝わり、スムーズな手続きが可能です。

認定結果は「要支援1~2」「要介護1〜5」の7段階に分かれ、それぞれに応じたサービスや支給限度額が決まります。判定後、ケアマネジャーと相談し、親御さんが必要とするサービスの利用に向けて準備を進めていく流れになります。詳しくは、次章にて説明いたします。

4.ケアマネジャーとの連携と介護サービスの選定

ここでは、ケアマネジャーとの連携とどのように介護サービスを選定するかについて説明いたします。

①ケアマネジャー選びで押さえたいポイント

ケアマネジャーは、介護が必要な方と介護サービスをつなぐ重要な役割を担っています。信頼できるケアマネジャーを見つけることで、遠距離でも親御さんの介護がスムーズに進む環境が整います。ここでは、ケアマネジャーを選ぶ際に押さえておきたいポイントをご紹介します。

1.経験と専門性

経験年数や得意分野を確認しておくと安心です。たとえば、認知症ケアが得意なケアマネジャーや、在宅支援の経験が豊富な方など、状態に合わせた支援が期待できます。

2.コミュニケーション能力

家族や本人の話に耳を傾け、わかりやすく説明してくれるかも大切なポイントです。不安や悩みを気軽に相談できるかが重要です。

3.信頼性と誠実さ

誠実に対応してくれるかも見極めたいポイントです。信頼関係を築けるケアマネジャーなら、遠距離でも安心して介護を任せられます。

4.相性

長期的な付き合いとなるため、親御さんや家族との相性も重視しましょう。親が気軽に相談できる親しみやすさや、家族にとって話しやすい雰囲気のあるケアマネジャーを選ぶと、ケアプランの調整もスムーズに進むでしょう。

◎知っておきたいポイント

地域包括支援センターや居宅介護支援事業所の窓口に「親の性格に合うようなケアマネジャーさんはいませんか?」と尋ねてみるのもひとつの方法です。

さらに、男性ケアマネジャー、女性ケアマネジャーといった性別の希望も相談可能なので、希望に合わせた形でケアマネジャーを見つけやすくなります。また、どうしても合わない場合は、ケアマネジャーを変更することも可能です。地域包括支援センターや市町村の役場に相談すると、対応してくれます。

②介護サービスを決定する際のポイント

遠距離での介護では、親御さんが無理なく利用できる在宅支援を選ぶことが重要です。ヘルパーやデイサービスなど、日常生活をサポートするサービスについてケアマネジャーと話し合い、親御さんの状況に合った支援を検討しましょう。

まずは、親御さんの身体状態や生活環境に適したサービスを選びます。たとえば、入浴が難しい場合にはデイサービスでの入浴支援が有効ですし、掃除や買い物が負担であれば、定期的に訪問するヘルパーの支援が生活の手助けとなります。遠距離でのサポートが難しい状況でも、介護サービスを利用することでQOL(生活の質)を維持しやすくなります。

また、家族が介護に割ける時間や状況もケアマネジャーに共有しておきましょう。家族として直接サポートが難しい場合には、ケアマネジャーと相談し、事業者の対応体制や緊急時の対応についても確認しておくと安心です。緊急時に備えが必要な場合には、訪問看護が緊急対応してくれるため、ケアマネジャーに相談し導入を検討すると良いでしょう。

5. まとめ:遠距離介護でも安心!サポート体制の構築

遠距離介護では、家族としての不安が尽きないものです。仕事や家庭の都合で頻繁に帰省が難しい場合には、介護の専門家に相談することが有効です。

地域包括支援センターは、地域に密着した介護の相談窓口として、介護の相談や高齢者の生活に関する悩みを受け付けています。また、介護保険の申請手続きやケアマネジャーの紹介も依頼できます。

家族で抱え込まず、ケアマネジャーや介護サービス事業所と相談しながら、親御さんとご家族が安心して生活できる体制を整えていきましょう。