
「親を施設に入れたいけれど、決断できない」「みんなは、どんなタイミングで施設入居をしているのだろう」
そう思いながら、ひとりで悩んでいませんか。
在宅介護を続ける中で「もう限界かもしれない」と感じても、いざ施設入居となると、なかなか踏み切れないものです。

みんなはどんなタイミングで施設入居を考えるのでしょう。自分ではわからなくなってしまって…。

そうですよね。
施設入居はとても大切な判断ですから慎重に行いましょう。ここでは私がケアマネージャーとしての経験をもとに施設入所のタイミングについてお話ししていきます。
介護をするご自身が疲弊してしまうと、仕事や健康面にも影響が出てしまいます。どのタイミングで施設入居に向けて動き出すかはとても大切です。
この記事では、多くのご家族と向き合ってきたケアマネジャーの視点から、施設入居を決断すべきサインや、実際に決断したご家族のその後、決める前に知っておきたい不安への答えをお伝えします。
親の施設入居を決断できない…その迷いは、多くの方が経験する自然なこと
「親を施設に入れる」という決断は、簡単にできるものではありません。「本当にこれでいいのか」「もう少し家で頑張れるのではないか」と、何度も気持ちが揺れるものです。
でも、知っておいてほしいことがあります。その迷いは、親御さんを大切に思っているからこそ生まれるものです。
施設入居を最初に考え始めるのは、ご本人ではなくご家族であることがほとんどです。

親のことを思うと、自分が施設を決めてしまっていいのか分からなくて…。

「自分が決めていいのだろうか」と迷う方は本当に多いです。でも、その迷いこそが、親御さんを想う気持ちの表れなんですよ。
「まだ頑張れる」と「もう限界」の間で揺れるのは、責任感の強い方ほど感じることです。
ただ、その判断を先延ばしにすると、介護者が共倒れになったり、思わぬ事故につながったりすることもあります。だからこそ、揺れながらでも、少しずつ前を向いて考えていくことが大切です。
ケアマネが見てきた「施設を考えるべきタイミング」3つ
「どうなったら施設を考えるべきか」という基準は、なかなか分かりにくいものです。ここでは、ケアマネジャーとして多くのご家族を見てきた経験から、決断を考えるべき3つのサインをお伝えします。
転倒・骨折など、大きな事故が起きたとき
転倒や骨折は、在宅介護の状況が一気に変わる大きな分かれ目です。
高齢の方の骨折は、若い人のようにすぐ回復するとは限りません。歩けていた方が車椅子の生活になると、移動や排泄の介助が一気に増えます。
それまで自分の身の回りのことができていた方でも、一度の転倒をきっかけに、つきっきりの介護が必要になることは少なくありません。
夜間の介護が続き、目が離せなくなったとき
夜にゆっくり眠れない状態が続いているなら、それは限界が近いサインです。
夜中のトイレ介助で何度も起こされたり、認知症が進んで目が離せなくなったりすると、介護者は、心身ともに疲弊していきます。徘徊や火の不始末は、命に関わることもあります。
厚生労働省の資料でも、在宅での生活を続けるのが難しくなる大きな要因として「認知症」と「夜間の排泄」が挙げられています。
介護者自身が、冷静に考えられなくなったとき
意外に思われるかもしれませんが、介護する方自身が冷静に物事を考えられなくなったときも、決断のサインのひとつです。
腰痛や血圧の上昇、眠れない日が続くなど、身体に不調が出ているなら要注意です。人は追い詰められると視野が狭くなり、適切な選択ができなくなります。

介護や仕事のことで頭がいっぱいで、何が正しいのか分からなくなっています。

ご自分の仕事や家事もある中で、しんどさを感じるのは当然のことです。まずは今のご自分が「疲れている」ことを理解するところから始めましょう。
【実例】転倒をきっかけに、施設入居を決めたご家族のその後
ここで、私がケアマネジャーとして実際に関わった、あるご家族のお話を紹介します。
穏やかな日常が、転倒で一変
そのご家族は、もともと関係がとても良好でした。
高齢の女性で、杖と、レンタルした手すりを使いながら、自分で歩けていました。天気の良い日には庭に出て、景色を眺めるのが好きな方でした。そこまで手のかかる状態ではなく、同居する息子さん夫婦との暮らしは穏やかでした。主に介護をしていたのは、長男の奥さんです。
ところがある日、玄関で転倒し、骨折して入院することになりました。高齢のため歩く力の回復は難しく、退院後は車椅子の生活になったのです。
「何とかしてください」限界を訴えた長男の奥さん
ご自宅に戻ってこられたものの、以前のように自分で移動することはできません。長男の奥さんは、つきっきりで介護をしなければならなくなり、限界を感じていきました。
私が相談を受けたとき、奥さんはとても切迫した様子でした。「もう自宅では無理です、何とかしてください」と。最初は「もう一度入院させてほしい」「病院でずっと見てもらえないか」とまでおっしゃっていました。
もちろん、それはできません。私は「まずは落ち着いて、一緒に施設を探しましょう」とお伝えしました。
第一希望は近くの特別養護老人ホームでしたが、空きが少なく、すぐには入れません。そこで、近くにある有料老人ホームへ入居されることになりました。
入居後、イライラが消え前向きになれた理由
入居されてからは、奥さんの様子が変わりました。
以前のようにイライラすることがなくなったのです。費用は、ご自宅で介護していた頃より増えましたが、「本人の年金もあるし、自分たちもまだ仕事を続けられる。それには変えられないね」と、前向きに受け止めておられました。
入居前は冷静に考えられていなかったことが、入居後には落ち着いて物事を判断できるようになっていました。そして今も、変わらず面会に通っておられます。

介護から少し距離ができたことで、心に余裕が戻る方は多いです。穏やかな気持ちで親御さんと向き合えるようになった、良い例だと思います。
踏み出せないあなたへ|不安の解消法と入居までの流れ
「決めたほうがいいのは分かっている。でも、踏み出せない」。そんな方のために、よくある不安への答えと、決めたあとの進め方をお伝えします。
罪悪感・お金・本人の拒否|3つの不安にお答えします
「親を見捨てるようで罪悪感がある」
施設への入居は、親御さんを見捨てることではありません。より専門的なケアへ移るための、前向きな選択です。介護施設のサービスも、介護保険制度の中で認められた正当なものです。罪悪感を抱く必要はありません。
※「施設に入れること」への罪悪感については、こちらの記事で詳しくお話ししています。

「お金が払えるか心配」
費用は、まず親御さんご本人の年金や資産を基本に考えます。施設は費用の幅が広く、公的な制度で負担を軽くする方法もあります。無理のない範囲で選べる施設は、必ずあります。
※施設の費用や負担を抑える方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。

「本人が嫌がっている」
いきなり長期の入居を決めるのではなく、ショートステイや体験入居から始めると、ご本人の気持ちが和らぐことが多いです。「知らない場所」への不安は、一度経験すると小さくなっていきます。
入居までの3ステップ|まず何から始める?
決断したあとは、次の順番で進めるとスムーズです。
ひとつ目は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談することです。状況を知っている専門家が、一緒に考えてくれます。
ふたつ目は、施設の種類を知り、パンフレットを取り寄せて比べることです。紹介サイトを使えば、複数の施設の資料を無料でまとめて取り寄せられます。
みっつ目は、気になった施設を実際に見学・体験することです。
※見学のときに見るべきポイントは、こちらのチェックリストが役立ちます。

入居が決まるまでには、平均で4ヶ月ほどかかります。特別養護老人ホームは、地域によっては1〜2年待つこともあります。だからこそ、早めの情報集めが、いざというときの安心につながります。

パンフレットを取り寄せたら、もう入居を決めたことになりそうで不安です。

「パンフレットを取り寄せる」のは、入居を決めることとは違います。「いざとなれば施設がある」と知っておくだけで、今の介護がぐっと楽になりますよ。
まとめ:施設入居は、ご家族の関係を続けるための前向きな選択肢です
今回は「施設入居のタイミング」について、ケアマネジャーとしての経験をもとにお伝えしました。
最後に、大切なポイントを振り返ります。
- 決断に迷うのは、親思いの証拠です。一人で抱え込まないでください。
- 転倒・骨折、夜間の介護、介護者自身の限界は、決断を考えるサインです。
- 実例のように、入居後にご家族が前向きになれるケースはたくさんあります。
- 不安には、それぞれちゃんと答えがあります。まずは情報を集めることから始めましょう。
施設探しは、ひとりで抱え込まなくてください。
まずはパンフレットを取り寄せて、選択肢を知ることから始めてみることをお勧めします。「いざとなれば施設に」という安心が、今のあなたの心を、きっと軽くしてくれます。
「いい介護」では、経験豊富な入居相談員が、希望のヒアリングから施設の候補提案、見学の手配まで、すべて無料でサポートしてくれます。
パンフレットを取り寄せるだけでも、「いざとなれば施設がある」という安心感が生まれます。まずは気軽に一歩を踏み出してみましょう。

